最近、ゲーミングPCやクリエイター向けPCはCPUやグラフィックボードの高性能化に伴い、パソコンの電源の消費が高まっています。
自作PCやBTO等でも、電源ユニットの容量が大きくなっており、1200w、1000w等大きな電源容量を積んだパソコンを見かける様になりました。
一方で、2023年6月時点、電気代は高くなってきています。そのため、「大きな電源容量を搭載したパソコンを導入することで電気代が上がるのでは」と考え、大きな電源容量を搭載したパソコンを購入することをためらっている方もいらっしゃる事と思います。
なぜためらうかという点を考えると、私もそうでしたが、「消費電力の高いゲーミングパソコンで負荷をかけた時にどれぐらいの電力が消費されており、待機中はどの程度の電力が消費されているのか」、「1200wの電源を搭載しているパソコンを購入した場合、常に1200wの電力消費が発生しているのか」等、わからない事があると思います。
やりたい事に対し、高性能なパソコンが必要な時、電源容量が原因で購入しない事は、やりたい事を十分にできない事に繋がります。また、パソコンの性能が上がった場合、作業時間の短縮に繋がるため、有意義だと考えます。
本記事では、パソコンの消費電力について、疑問点を調査しましたので、まとめます。
皆様のパソコンの消費電力の考え方について、ご参考となりますと幸いです。
電源容量に対する心配事
よく見かける心配事について、調査しました。私自身も疑問を持った事のあるものとなります。
- 電源容量の電力が常に消費されているのか(例:電源容量1200wの電源をさすことで、常に1200w電力が発生しているのではないか)
- パソコンの電源をOFFにしてコンセントをつないでいる状態では、電力がどの程度必要なのか
- パソコンの電源をONにして、負荷の低い状態では、どの程度の電力を消費するのか
- 事務作業(エクセルを立ち上げて作業)をしている時の消費電力
- パソコンの負荷が高い時にはどの程度の電力を消費するのか
上記4点について、ワットチェッカーを使い消費電力を確認しました。
消費電力を確認した環境
ワットチェッカーで消費電力を確認したPCの構成は以下となります。
PCの構成
ゲーミングPCで、フルHDでゲームを行う場合、困る事が少ない構成のパソコンとなります。
- CPU:Intel Corei7(13700k)
- CPUクーラー:H150i RGB ELITE
- GPU(グラフィックボード):GeForce RTX 3060 VENTUS 2X 12G
- メモリ:64GB(Crucial DDR4 )
- ストレージ:1TB(WDS100T2X0E)
- マザーボード:ROG STRIX Z790-A GAMING WIFI D4
- 電源ユニット:RM850x (CORSAIR)
- OS:Windows 11 Home
「電源容量に対する心配事」で、1200wの電源でと記載していたため、検証を1200wの電源で行うべきでしたが、検証作業時、手元に1200wの電源がなかったため、代用として850wの電源を利用しています。ご容赦ください。
各疑問の検証
まとめの都合上、「電源容量に対する心配事」に記載した順番と検証結果の記載が前後しています。
パソコンの電源をOFFにしてコンセントをつないでいる状態では、電力がどの程度必要なのか
消費電力は、1wと待機中の電力はかなり低いものとなっています。
待機中は各パーツについて、負荷がかかっていないため、消費電力は低い状態です。
パソコンの電源をONにして、負荷の低い状態では、どの程度の電力を消費するのか
パソコンの電源を入れ、しばらく放置した状態の消費電力です。70w程度とかなり低い事がわかります。
参考として、通常利用時の消費電力をカタログベースとなりますが、記載します。
Intel Corei7(13700k)とRTX 3060それぞれの消費電力の想定を記載します。
「Intel Corei7(13700k)とRTX 3060の消費電力(カタログ値)」
- Intel Corei7(13700k):125w(プロセッサーベースパワー)/253w(マキシマムターボパワー)
- RTX 3060:170w
※プロセッサーベースパワー:CPUの通常動作時(ベースクロックで動作時)の消費電力/マキシマムターボパワー:CPUの性能を最大限上げた時(最大のクロック時)の消費電力
想定電力から通常利用している際の合計電力は、「125w+170w=295w」となります。
待機中の電力は、何も作業をせず、CPU、グラフィックボードそれぞれに負荷がかかっていないため、通常利用時に必要となる電力よりも低い電力で動くため、消費電力が70wとなっています。
事務作業(エクセルを立ち上げて作業)をしている時の消費電力
事務作業をしている事を想定して電力を図ります。エクセルを立ち上げ、文字入力をしている状態の電力となります。
71w~96w程度となっています。パソコンの電源をONにした時の待機中の消費電力が70w程度という事で、作業をしたことで若干消費電力が上がっていますが、20w程度の増加です。
ゲーミングPCで事務作業をする場合、負荷が高い作業にならないため、消費電力は上がっていないといえます。
パソコンの負荷が高い時にはどの程度の電力を消費するのか
負荷の高い状態を再現するため、「ファイナルファンタジーXVベンチマーク」を動作させました。設定は、1920×1080でフルスクリーン、高品質となります。
CPUの利用率が低く、GPUの負荷が高い状態です。CPUとGPUの両方が高負荷である状態がベストですが、取得が難しく、今回はGPUの負荷が高い状態を取得しています。
GPU稼働率が100%の状態での消費電力となります。普段は300w前後で動作しており、高負荷時には、390wと消費電力が高くなっています。
電力消費の激しいGPUとCPUに対して高負荷をかけた場合の最大の電源消費量は以下となります。
- Intel Corei7(13700k):253w(マキシマムターボパワー)
- RTX 3060:170w
合計:253w+170w=423w
423w以下で動作していることから、まだ最大消費電力を利用していませんが、390wは、423wの9割程度となります。高負荷な状態にあるといえます。
尚、ベンチマーク等でわざと負荷状態を作成しないと、ここまでの消費電力は発生しません。
電源容量の電力が常に消費されているのか
これまでの検証を見てわかる様に、パソコンの電源容量が850wのものを利用した場合、電源容量の850wが常に使われているわけではありません。
電源OFFの待機中は1w、電源ONの待機中は70w、簡単な作業時に96w、高負荷時では390wといった様に、電源容量内に収まる電力で、その時その時でパソコン全体が利用する電力が供給されている状態です。
まとめ
パソコンの消費電力について、調査を行いました。パソコン全体で利用する電力は処理の負荷状況で、変化します。
常に高負荷の場合は、消費電力は高いですが、高負荷を継続する状態は少ない方は、最高電力よりも低い電力でパソコンを動かす事ができます。ポイントとなりますが、高性能なパーツを利用する場合は、通常稼働時の電力も上がる事に注意です。
消費電力を気にされる方は、電源容量で計算するのではなく、各パーツでどの程度の電力消費されるかを計算したほうが、実際の消費電力がわかると思います。パーツ事の消費電力を調べる事が難しい場合は、パソコンの購入前にお店の方に消費電力を確認してはいかがでしょうか。
本記事が、パソコンの消費電力の考え方の参考となりますと幸いです。
以上です。